虫歯治療で行った歯科医院で、2度も麻酔が効きませんでした。
「私ではちょっと」といわれて自衛隊病院を紹介され、やや不安を感じながら行きました。ところが状態を聞いてくれた看護官、治療に当たった二佐の医官の、きびきびした対応と適切な処置で痛みが消えました。
そんな経験もある自衛隊の看護官が、新型コロナの感染拡大で医療崩壊寸前の大阪と北海道へ派遣されました。今後の状況によっては、自衛隊への派遣要請はさらに増えるでしょう。数年来、大災害の度に人命救助や財産保護などで各地に自衛隊が出動しています。
使命、規律、装備まで完結した組織である自衛隊への国民の信頼は増しました。東日本大震災のとき、被災地で数週間、救援活動した隊員が撤収するとき、市民は涙で見送ったものです。
注目を集めたダイヤモンド・プリンセス号の集団感染への対応でも、自衛隊の実力は発揮されました。それがいま新型コロナに苦しんでいる各地から派遣が要請されている理由です。
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そんな騒然たる状況を見て、元自衛官で現参院議員の佐藤正久氏が「自衛隊は便利屋ではない」と発言したことが波紋を広げました。大阪府知事らは「そんな気持ちは全くない」と否定しましたが、当然です。
しかし警察予備隊として発足して以来、自衛隊は一部の人たちから憲法違反だと批判されてきました。教師が自衛官の子どもを白眼視したり、自衛官の大学院進学を陰湿に邪魔した大学もあります。民主党政権下の官房長官だった仙谷由人氏は「暴力装置」と吐き捨てました。また中国で大地震があったとき、ある学者が自衛隊を救助活動に派遣しろと発言しました。自衛隊は国民の生命、財産、自由を守るためにあるのです。自衛隊を誹謗したり便利屋扱いしたり他国への迎合は、彼らの使命と覚悟を冒涜するものです。

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東映会長の岡田裕介氏の急逝には驚きました。まだ71歳の若さ、数か月前の手紙に「顔を出して下さい。お昼でも」とあったからです。お父上の茂氏にも親しくさせていただきましたが、茂氏の『きけ、わだつみのこえ』から『仁義なき戦い』までが物語る映画人としての貪欲さに対して、裕介氏には吉永小百合さんが主人公の映画に見るロマンとナイーブが光っていました。
一昨年夏、宣伝部長や子会社の社長を歴任した池田静雄氏が亡くなり、遺族から「家族葬で」といわれました。それでも私が参列すると、すでに裕介氏が来ているではありませんか。岡田茂・裕介2代に仕えた池田氏を「おじき」と呼んだので、私たちが「これからは『若ッ』と呼びますか」と返して大笑いした日のことを思い出しました。
編集主幹 伊藤寿男
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