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大腸がん&乳がんの患者に
「遺伝子変異」発見で投薬効果が急上昇!
抗がん剤が効く患者と効かない患者を見極めることができるようになったが…


KRAS遺伝子の変異がカギ
「2割の患者に効けば御の字」と語られる抗がん剤。しかし、遺伝子解析技術の進歩で、抗がん剤の有効性をより高めようという動きが出てきている。臨床試験段階で効く患者と効かない患者を遺伝子レベルで見極め、診断薬や検査キットで投与前にあらかじめ患者を選別する手法だ。
 日本の医療界で最近話題になっているのが、独メルクセローノ社と米ブリストルマイヤーズスクイブ社の転移性大腸がん治療薬「アービタックス」だ。この抗がん剤は、がん細胞の表面にあるEGFR(上皮成長因子受容体)というタンパク質に特異的に結合する抗体医薬(分子標的薬)である。これら抗体医薬がすべての患者に効けばいいのだが、アービタックスも、他の抗がん剤と同様に、一部の患者にしか効果を示さない。何故か。
 細胞分裂を促す「KRAS」という遺伝子がある。この遺伝子に変異が起こると増殖に歯止めがかからなくなり、細胞が「がん化」するといわれる。大腸がんや肺がん、すい臓がんの患者でKRAS遺伝子変異が多くみられ、なかでも大腸がん患者では変異割合が35〜45パーセントと高い。アービタックスはこのKRAS遺伝子変異の患者には効果がないのだ。
 実際に、欧米で1千200人の患者で実施された臨床試験では、KRAS遺伝子変異の有無が大きく効果を左右した。KRAS遺伝子変異のない患者に対し、大腸がんの標準療法である「FOLFIRI」(持続静注フルオロウラシル/ホリナートカルシウム/イリノテカン)単独投与と、「FOLFIRI+アービタックス併用」投与の2群に分けて効果を見たところ、無増悪生存期間(がんが悪化せずに生存している期間)は中央値(患者100人のうち50人目のがんが悪化するか亡くなるまでの期間)で、単独投与群の8・7か月に対し、アービタックス併用投与群では9・9か月と有意な結果だった。
 ところが、KRAS遺伝子変異の患者では、単独投与群の8・1か月に対し、アービタックス併用投与群が7・6か月と逆の結果となった。欧米ではアービタックスを投与する際には、KRAS遺伝子の変異の有無を調べることが必須となっている。
 同じようにKRAS遺伝子変異の患者に効果がない抗がん剤に、転移性大腸がん治療薬として武田薬品工業が承認申請中の「ベクティビックス」、また非小細胞肺がん治療薬の「イレッサ」(アストラゼネカ)や「タルセバ」(中外製薬)などがある。
 こうした遺伝子検査を投与前に必要とする抗がん剤は、アービタックスやベクティビックスだけではない。先駆けは'01年に日本で発売された乳がん治療薬「ハーセプチン」(中外製薬)である。

■英国では費用対効果を重視へ
 
 ハーセプチンは、がん細胞の表面に存在するHER2と呼ばれる細胞増殖因子の受容体(タンパク質)の抗体医薬で、乳がん患者のうち、HER2が過剰に現れている約20〜30パーセントの患者に対して効果を発揮する。従来の抗がん剤にハーセプチンを併用すると、6〜7割の患者で乳がんが完全消失したという劇的な治療成績もある。このため、発売当初から「検査でHER2過剰発現が確認された患者」にのみ、ハーセプチンの投与が許可されている。
 抗がん剤が効く患者と効かない患者を見極めて投与する―。患者からすれば、ありがたい話だが、最近は抗体医薬など技術的に複雑で、年間費用が500万円を超えるなど非常に高価な新薬が多い。世界中の製薬会社は、遺伝子解析技術の進歩で、効果の高い患者に絞って新薬を開発するという時流に乗らざるを得ず、投与する患者が少なくなるため価格を引き上げる方向に進んでいる。
 それゆえ、この治療費を何とか抑えようと欧米諸国の政府が取り組み始めた。顕著な例が英国である。
 英国では、日本の医療保険制度に当たる「国民保健サービス」(NHS)で使用を認める新薬について、どんな患者に効果があるのか、政府機関が10年前から経済的(費用対効果)評価を行っている。
 最近の事例では、ハーセプチンと同じHER2抗体医薬の「タイケルブ」(英グラクソスミスクライン社、日本では近々発売)について昨年10月、「費用対効果が認められない」(高い価格のわりには効果が低い)として、NHSでの使用を認めないとの厳しい判断を下した。
 また、こんな例もある。昨年8月に進行性腎細胞がん治療薬の「ネクサバール」(独バイエル)、「スーテント」(米ファイザー)、「トリセル」(米ワイス)、「アバスチン」(スイス・ロシュ)の4薬を評価し、「高い費用に見合った有効性がない」として、患者に投与すべきではないとの判断を下し、患者団体に動揺を与えた。
 ただ、今年2月に、4薬のなかでスーテントだけは、生存期間の中央値を2年以上延長させたことを評価し、NHSでの使用を認めた。日本では、腎細胞がんでネクサバールとスーテントの使用が認められている。
 この英国の政策は、欧米各国にも影響を与えており、グローバル展開する製薬会社も、値引きに応じるなど対応を迫られている。
 繰り返すが、欧米では、アービタックスの投与前には、KRAS遺伝子変異の検査が必須となっている。効果がないと判明した場合には、使用を控えることで、経済的にはもちろん、副作用による無用な身体的負担を患者にかけずにすむ。その必要性は日本でも同じだが、少し事情が異なる。

■限られた患者に効果があるが
 日本では、アービタックスは昨年9月に発売されたが、KRAS遺伝子検査については厚生労働省が一部の医療機関にだけ許可する「先進医療」の対象にしているものの、医療保険の対象にはしていない。
 アービタックスは、1回の治療に約150万円もの薬剤費がかかる。先進医療の対象になれば、患者の自己負担は10万円未満ですむが、あくまで一部の医療機関でしか投与を受けられない。このため、専門医が集まる大腸癌研究会などが、一般の医療機関でも検査ができるように「KRAS遺伝子検査の医療保険適用」を厚労省に要望している状況だ。
 しかし、そもそも「検査すら必要ない」とする医療関係者もいる。先述したアービタックスの臨床試験結果を見てもわかるが、既存の薬剤を組み合わせたFOLFIRI療法単独投与と比べて無増悪生存期間はわずか1・2か月の差しかないからだ。
 遺伝子解析技術の進歩で、限られた患者にのみ効果の高い抗がん剤がこれから続々登場するが、高い価格に見合う効果が得られるのか、患者も政府も難しい選択を迫られる。
 とはいえ、抗がん剤の技術は確実に進歩しており、これまでは考えられなかった効果が得られるようになってきていることはたしかだ。

(2009年6月号掲載)
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