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■左翼や労組が出入りする公邸
「森（喜朗）元首相がお化けの一部を見たという話を伺ったことがある。（幽霊には）足がないといわれているが、足の部分だけを見たと…」
安倍晋三首相はテレビの報道番組で、首相公邸に幽霊が出るという噂についてこんなことをいっていた。
首相公邸・官邸が移築された'05年以降、麻生太郎元首相の117日に続き、公邸に入居していない記録を更新中
（180日＝６月23日現在）なのが、安倍首相だ。そのため、「なぜ、公邸に入らないのか？」「お化けが怖いのか」など、ネットやツイッターで噂になっていることについて、「都市伝説の一つ」といいながらも、首相自らが言及したものだ。
呆れたことに民主党の加賀谷健参院議員はこれを国会で取り上げ、質問趣意書にまでした。
「首相公邸に幽霊が出るとの噂があるが、それは事実か」
「安倍首相が公邸に引っ越さないのはそのためか」
これに対する政府の答弁書は「承知していない」というものだったが、こんな小学生並みの質問をしているようでは、民主党に再び政権が戻ってくることはなさそうだ。だが、問題は別のところにあるというのは、首相公邸のあるスタッフである。
「安倍首相は第１次政権のとき、公邸に入っているから公邸自体に何か問題があるというわけではない。しかし、３年間の民主党政権で官邸や公邸には左翼系活動家や労働組合幹部など、これまでだったらとても出入りできないような人たちがパスを取得して入り込んでいたことは事実。盗聴器や監視カメラなどが仕掛けられている可能性もある。また、民主党政権時のスタッフがすべて去ったというわけではなく、首相周辺の危機管理上、まだ公邸に入るには早すぎるとの判断もある」
現在、安倍首相は東京・渋谷区富ヶ谷の私邸から公邸に通っているが、この自宅には安倍氏の母・洋子氏（85歳）が住んでいる。彼女は岸信介元首相の長女であり、父と息子を首相とした女性は洋子氏が初めてだろう。夫の安倍晋太郎元外相が中曽根康弘元首相の「後継間違いなし」といわれながらも、病に倒れ亡くなったことから、「どうか息子の晋三に政治家としての運を与えてやってください」と祈り続けた母である。
安倍首相が'93年に初当選して以来、政界の内情を知悉している洋子氏が、さまざまなアドバイスをしてきたことは間違いない。安倍首相が公邸に住めば、まさか母親も一緒にというわけにはいかなくなり、「気軽に行き来できなくなる」（官邸筋）という事情もある。
■安倍氏の会話に加わる洋子氏
安倍首相の私邸は３階建てマンションの２階にある。といっても、このビル自体が洋子氏と兄・寛信氏の所有になっており、１階には寛信一家、３階に洋子氏が暮らしている。安倍氏を知る政界関係者がいう。
「建物内は中で行き来できるようになっており、何かあれば洋子さんはすぐ２階へ下りて安倍首相と話ができるようになっている。安倍邸には与野党問わず、さまざまな政界関係者が集まってくるが、洋子さんが話に加わることもあるようだ」
安倍氏が政治家としてスタートした当初、洋子氏は「演説のスピードが早すぎる」「高齢者にも聞き取れるように話すべきです」などのきめ細かいアドバイスもしたという。第２次安倍政権で首相が髪形を変えた背景にも、洋子氏の適切なアドバイスがあったともいわれている。
これだけを見ると、母親に頭の上がらないマザコン首相のように見えるが、最近は吹っ切れたものがあるのか、自信に満ちた会話もあるらしい。こんなことがあった。
長嶋茂雄と松井秀喜に対する国民栄誉賞表彰式が東京ドームで開催された５月５日夜、安倍首相は山梨県鳴沢村の別荘で昭恵夫人、洋子氏とともにバーベキューを楽しんだ。首相は長嶋氏と松井氏からもらったサイン入りボールやユニホームを見せ、喜んでいたという。
洋子氏が「それにしても、あなた（晋三氏）、東京ドームで『僕はアンチ巨人でした』なんてよくいえたわね。巨人ファンを敵に回すじゃないの？」というと、安倍首相は嬉しそうにこう答えた。
「いや、あれでいいんだ。巨人ファンはもともと喜んでいるんだから、ああいうことで『アンチ巨人』も喜ぶから、結局、国民全体が喜ぶことになるんだよ」
実は、洋子氏は昨年の自民党総裁選で安倍氏が再び首相の座を狙うことを“反対”していた。持病の潰瘍性大腸炎は完治ということはない。再発予防のためには症状の有無にかかわらず、薬の服用が必要だ。さらに再び首相という“激務”をこなせば、命を落とすようなこともあるかもしれない――。息子を心配するあまり、つい口を出してしまうのはどこの家庭でも同じだろう。
■昭恵夫人と親しい候補に批判
安倍首相にとっては、昭恵夫人も頭を悩ます存在である。もともと昨年10月に東京・内神田に居酒屋『ＵＺＵ』をオープンさせた背景にも、「安倍夫妻の不仲説が飛び交っていた」（安倍氏周辺）だけに、周囲も心配していた時期があった。
首相退任後、病床に伏した安倍氏に「いっそ政治家をやめれば…」と声をかけたこともあった。これに対し、安倍氏は「たとえ死んでも、政治家は責任を取ってやらなければならないことがある」と、口論になったこともしばしばだ。
アッキーの愛称で呼ばれる昭恵夫人は“天真爛漫”な性格でファンも多いが、父は森永製菓元社長の松崎昭雄氏で、グリコ・森永事件（'84年）当時は、昭恵氏を警察がガードすることもあった（その隙を縫って安倍氏とデートしていたことはあまり知られていない）。ただ最近は「私は家庭内野党。夫に対して嫌なこともいう」と、いささか“暴走”気味なのだ。
６月６日、農村部の活性化を目指すＮＰＯ法人「ふるさとテレビ」主催のセミナーで昭恵夫人は「（原発は）日本の大事な技術だ」と前置きしながらもこういった。
「私は原発反対なので、非常に心が痛む。原発に使っているお金の一部を新しいエネルギーに使って、日本発のクリーンエネルギーを海外に売り込んだらもっといい」
安倍首相が、原発の輸出に向けて中東諸国やインドとの交渉に道筋をつけているだけに、首相周辺には戸惑いも出てきた。同時に参院選比例代表の自民党公認候補者に、昭恵夫人と親しい人物が入っていることが自民党内からも批判されている。
１人は歌手「東京プリン」の伊藤洋介氏で森永製菓の元社員。もう１人はペットを通じて知り合ったドッグトレーナーの田辺久人氏だ。安倍首相は野党には強いが、母と妻という「家庭内野党」には頭を抱える日々が続きそうだ。
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