■活断層認定は学問的には任意
いま、日本の地震学の権威といわれた東京大学地震研究所(東大地震研)が、誤報問題で揺れている。
その原因は、立川断層帯を調査している東大地震研の佐藤比呂志教授を中心とした調査チームが、コンクリートを断層の岩石と見間違えたことだ。
今回の誤認は、2月に調査現場を公開した際、見学していた一般の工事関係者からボランティアスタッフに「コンクリートの柱ではないか」、
との指摘があり発覚したものだ。
それを受けた佐藤教授は、会見で誤報の原因についていう。
「予想した位置だったため見たいものが見えてしまった。公開までに一定の見解を出さなければならないとバイアスが掛かった。
集団催眠のように広報してしまった」なんと思い込みであったことをあっさり述べたのだ。
さらにプロジェクトの責任者にもかかわらず3回しか現場を訪れておらず、土木的な知識もなかったことも判明している。
この佐藤教授やその調査チームが所属する東大地震研は、いったいどんな研究をしているのか。
佐藤教授は’91年に東大地震研に助手として就いているが、それまで地質学の研究はしても活断層に関する専門的な研究は一つも出したことがなかった。
その後地震研で活断層研究を開始し、文科省の「立川断層帯の重点的観測」プロジェクトに加わる。
そのような立場にいながら、原子力規制委の委員として東通原発の有識者委員会にも加わっている。
その際、「(活断層があることを前提として)地震像を明らかにする調査をしたらどうか」と発言している。
つまり、調査もせずに「活断層=地震=危険」という発想で国民の不安を煽ってきたのだ。
東大大学院理学系研究科教授のロバート・ゲラー教授は、地震研の活断層についての研究に疑問を投げかけていう。
「そもそも“活断層”と地震を結ぶ理論は確立されていないし、断層が活断層であるかどうかの判断基準(例えば約259万年前から約180万年前=・第四紀・以降に滑ったこと~)
は任意であり、学問的根拠は乏しい。すべての地震断層に危険性はある。
“活断層”についての研究は今後の地震発生を正確に予測することに大きく貢献できるとは考えない」
だいたい現生人類(ホモ=サピエンス)の歴史は20万年ほど前に始まったが、本格的に自然環境に適応したのは氷河期が終わった1万年前の頃で、
12万年とか40万年という数字は全く非現実的なのだ。
■研究や調査より内紛続きとは
政府は、『活断層』と判断した断層の位置と発生頻度などを調べているが、現実的に被害をもたらしているのは政府発表以外の断層で周期など関係なく発生している。
そういった面からいうと、規制委が東通原発の活断層を活動性が低いながらも原発停止へ追い込んだこともおかしい。
東大地震研の発表も問題が多い。
’12年1月の「M(マグニチュード)7級の首都直下型地震が4年以内に70パーセント」と発表した平田直教授は、
自らの地震研に「非常に大きな誤差を含んでいる」とホームページで注意されたことだ。これは実際に平田教授が実は数字は「ヤマ勘だ」
と週刊誌に洩らしたほど杜撰なものだった。しかも、そのホームページ作成を行った地震研広報アウトリーチ室の大木聖子助教は、
’12年8月にアウトリーチ室を退任している。
内情を知る地震学会関係者がいう。
「平田教授は文科省から予算をとってくるのはうまいが、論文を見てもあまり研究をやっていないような人。
当時地震研の所長だったが、ホームページ作成をした大木助教に怒り、教授会で感情的に取り上げ、アウトリーチ室から専門外の分野に飛ばしてしまった。
その後平田教授は、通例なら2期務める所長の2期目の選挙前に『選ばれたくない』という希望を出し、責任者の立場から逃げた」
さらに今年4月に大木氏が慶應大学湘南藤沢キャンパスに移ったのも、平田教授が東大地震研から追い出したためだと囁かれる。
そもそも東大地震研は、関東大震災から2年後の1925年に東京帝国大(当時)に設立され、地震や火山の研究から減災の研究を行っている。
発足の目的は文部省の震災予防調査会の内容を引き継ぐことであり、東大からは実質的には独立、文科省に直接研究を申請してほとんどの研究費をとっている。
‘11年度の日本の地質調査関連の予算は135億円だが、そこから東大地震研は50億円以上を確保しているといわれる。
しかし、その予算をうまく配分し研究で成果を挙げるよう使える研究者は、129人いる東大地震研のなかでほとんどいない。
今回の「立川断層帯トレンチ調査『榎トレンチ』の調査」には2千300万円、立川断層帯プロジェクト全体では1億円の予算がついているといわれている。
さらに平田教授の誤報があった「首都直下型防災・減災特別プロジェクト」(文科省)にも、他研究所との合同だが、’07年から5年間で44億円がついていた。
■「勇気がある」と弁護する朝日
そもそも、防災を目的とした東大地震研が、予算に見合った研究をしているとは思えない。
武蔵野学院大学の島村英紀特任教授はいう。
「地震学会で20近くあるセッションのなかで、地震予知は1セッションしかない。しかも発表する研究者のレベルは巷で地震予知をしているような人で、
研究者というような人はあまりいない。それなのに東大地震研の地震予知研究センターは、センター長の平田教授や佐藤教授ら4人の教授と5人の准教授などの大所帯で地震予知研究をしている」
さらに、東大地震研を中心とした日本の予知研究者らが騒ぐ“活断層”も、地震学会のセッションでは1つしかないことも島村教授は指摘するが、
そもそも活断層=地震=危険という図式が近年蔓延りすぎだ。
活断層に関して、大手メディアの姿勢にも問題がある。これだけ問題になった今回の誤認でありながら、メディアはあまり追及していない。
例えば会見翌日の朝日新聞(3月29日付)では誤認という事実は書くものの、4面扱いで、大見出しは「活断層 難しい判断」と書いていた。
さらに「方法論としては問題ない。ミスを認めて発表したことは勇気がある」などというコメントも並べ、いかにも擁護する人が多いというような記事になっていた。
またNHKは放送予定だった『MEGAQUAKEⅢ』の立川断層の部分を、差し替えて放送した。
そこには立川断層で起きる地震が首都に壊滅的な被害を与えるというVTRが入る予定だったが、東大地震研から待ったがかかり差し替えたと、
地震学関係者の間では語られている。地震研もメディアも、もっと日本のためにあるべきだ。
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