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脊髄再生‐iPS細胞で臨床研究へ

岡野栄之&中村雅也慶大教授が挑む
両教授が共同研究を始めて20年で大事故を起こしても治癒できる可能性が


■10万人以上もいる脊髄損傷者
「ラグビーワールドカップ2019」('19年9月20日〜11月2日)では日本中が沸いた。史上初のベスト8進出という快挙に、多くの「にわかファン」が生まれた。大会中、テレビカメラを向けられた小学生の男の子は「ラグビーは男と男の体のぶつかり合いだ」と胸を張った。  しかし、ラグビーに怪我は付き物だ。切り傷、打撲ならまだしも、骨折、脱臼も珍しくない。なかでも怖いのは、何かのはずみで背中や首を強打したときに生じる「脊髄損傷」である。  日本ラグビーフットボール協会の資料によれば、'16年4月〜'18年12月までに寄せられた重症障害49件のうち21件が「頸椎損傷・脊髄損傷」だった。頸椎とは首の骨で、神経の集まりである頸髄を囲む。背骨に囲まれた脊髄も同じく神経の集まりで、ダメージを受けて壊れてしまうと運動神経や知覚神経などの働きが失われてしまう。頸髄だと首から下、脊髄だと損傷部位から下が麻痺し、車いすや寝たきりの生活を余儀なくされる。国内には現在10万人以上の脊髄損傷者がいるとされているが、今のところ有効な治療法は確立していない。  ブームに乗って、ラグビー人口が増えれば、痛ましい事故が発生するリスクも上がる。しかし、将来、仮にそのような大事故が起きたとしても、治療できる可能性が見えてきた。 「私と中村先生が共同研究を始めたのが'98年で、まさに20年が経って臨床研究をスタートできる状況になった。やっとスタートラインに立った、という気がする」  こう話すのは、慶応義塾大学医学部の岡野栄之教授(生理学)だ。'19年2月18日に慶大で開かれた記者会見に、中村雅也慶大医学部教授(整形外科学)とともに臨んだ。この日は、両教授が取り組んできた「亜急性期脊髄損傷に対するiPS細胞由来神経前駆細胞を用いた再生医療」の臨床研究の計画が、厚生労働省から了承された。つまり、両教授の治療法が安全なのかを実際に患者で検証することが認められたのだ。  両教授の治療法とは、大まかにいうと、損傷した脊髄部分に、新しい細胞を移植することで、以前のような状態への回復をめざす再生医療だ。iPS細胞は「人工多能性幹細胞」で、さまざまな細胞になることが可能だ。今回の場合は、壊れた神経を修復するため、iPS細胞から神経のもとになる「神経前駆細胞」をつくり、患者へ投与する。  治療対象は「亜急性期脊髄損傷」の患者だ。亜急性期とは、ケガをしてから「14〜28日間」とまだ日が浅く、損傷部位周辺ではいろんな変化が生じている。それ以降は慢性期脊髄損傷に移行するが、両教授の研究によれば、比較的早い段階での神経前駆細胞の移植が、有効な治療となる可能性が高いことがわかっている。



■再生医療は普通の医療になる
ただ、ここまでの道のりは長かった。20年という年月が示しているように相当険しかったようだ。 「これまでいろんなことがあった。当初研究を始めたときには胎児由来の神経幹細胞移植から始まり、それがなかなか厳しいという現実にぶちあたったところで、山中伸弥先生との出会いを通してiPS細胞という方向転換をし、ここまで来た」  こう語ったのは、会見に同席した中村教授だ。壊れた脊髄に新しい細胞を移植する発想自体はもとからあったが、以前は使用する細胞が中絶した胎児から得た神経幹細胞だった。  もし患者に移植するとしたら、あらかじめ細胞を用意しておく必要がある。しかし、この方法では短期間で移植分の細胞をそろえることは難しく、何より倫理的な問題がつきまとい、人への応用は困難といわざるを得なかった。そのとき救いとなったのが、中村教授の発言にもあった、京都大学の山中教授が編み出したiPS細胞だった。  京大iPS細胞研究所(CiRA)では、「再生医療用iPS細胞ストックプロジェクト」として、ボランティアの人から得た血液からiPS細胞を作製して、さまざまな再生医療で活用する取り組みが進められている。自身の血液からiPS細胞をつくることも可能だが、時間がかかるうえ、費用も高額だ。他人由来のiPS細胞であれば、必要に応じて細胞が得られるうえに、安価で済む。  実際に、自身の細胞を培養して治療に用いた場合、高額になる。  例えば、2月に保険収載されたニプロと札幌医科大学が共同開発した「ステミラック注」は、同じく「脊髄損傷に伴う神経症候および機能障害の改善」を効果とする薬剤だ。患者本人の骨髄から採取した幹細胞を培養し、再び患者の静脈内に投与することで神経再生につなげ、機能を改善させる。自身の幹細胞を増やして用いるため、培養にも一定の時間がかかり、薬価は「1千495万〜7千755万円」にまで跳ね上がる。  新規の治療法の普及には、安全性、有効性のほか、費用面も重要な要素になる。慶大ホームページ上に、中村教授のインタビュー記事が掲載されており、そこで、再生医療の費用対効果について言及している。 「再生医療は特殊な医療だと思われがちだが、5年後、10年後に普通の医療として提供できるようになっていないと再生医療そのものがなくなってしまうと思う」



■中枢神経「再生」へ光明を灯す
 かつて脊髄など中枢神経を再生できるとは誰も思っておらず、「そんな夢物語は研究にもならない。やめておけ、と皆にいわれた」とも中村教授は同記事中で振り返る。そもそも整形外科医の中村教授が、幾多もある壁を乗り越えてまで再生医療に取り組むのには理由がある。  同記事によると、中村教授は学生時代にバスケットボール部に所属しており、冬はスキーに行くのが恒例だったが、2年次のとき、一つ下の後輩がゲレンデで怪我をして脊髄損傷になったという。 「当時は脊髄損傷という怪我がどういうものか全く知らず、それほど大きなこととは考えてなかった。ところが、その後、彼は医学部を続けることができなくなった。目の前で怪我をした後輩のその後の人生をそばで見て、これだけ医療や医学が進歩しているのに、なぜ治せないんだろうという思いでいっぱいだった」  その後、粘り強く研究を続けた結果、臨床研究の実施にまで漕ぎつけた。将来的には、今回の亜急性期脊髄損傷だけにとどまらず、慢性期脊髄損傷にも治療の幅を広げたいとの意向だ。  具体的な開始時期はおそらく'20年4月以降になりそうだという。  ベスト8入りを果たしたラグビー日本代表は世界一とされる練習量で快挙を成し遂げた。苦難の末にたどりついた今回の臨床研究も、人々に希望を与えて、世界を沸かすような成果が得られると期待したい。

(2020年1月号掲載)
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