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子宮・卵巣がん肉腫を新診断→治療へ

森誠一「がん研究会プロジェクトリーダー」が開発した
稀少がんや難治がんも遺伝子解析で画期的な創薬や治療法の可能性が広がる
ジャーナリスト 安達 純子


■遺伝子変異を把握して創薬へ
 国内死因第1位の「がん」は、今世紀に登場した次世代シーケンサーという高速遺伝子解析装置の登場で、新たな診断法や治療法が誕生している。がんは正常な細胞の遺伝子変異で生じるため、遺伝子変異を調べてがんの成り立ちや弱点を突き止めれば、創薬にもつながる。人口10万人あたり6例未満と患者数が非常に少ない「希少がん」でもそれは同じだ。  今年10月、がん研究会がんプレシジョン医療研究センター次世代がん研究シーズ育成プロジェクトの森誠一プロジェクトリーダーらの研究論文が、海外の科学雑誌に掲載された。「希少な子宮・卵巣がん肉腫のゲノム異常パターンに基づく新しい分類法を開発」という内容である。  子宮・卵巣がん肉腫は、国内で人口10万人あたり1〜2例。5年生存率は子宮肉腫で約35%、卵巣がん肉腫で約30%と予後が悪い。この希少がんに対する分類法の開発で新たな診断・治療・創薬への道を開いた。 「次世代シーケンサーを使えば、希少がんでもゲノム異常を調べることは容易ですが、がん細胞に生じる遺伝子変異はひとつではありません。100個、あるいは、それ以上の数の遺伝子変異の中から、がんの本当の原因となっている変異を探さなければなりません。ひとつの検体を調べるだけではわからず、たくさんの検体を調べることで初めて原因にたどり着くことができます」(森氏)  細胞は遺伝子の複写で新たな細胞を生み出すため、細胞分裂を繰り返すうちに複写ミスが起こり、それが遺伝子変異へとつながる。がん細胞の増殖を促進する遺伝子変異(ドライバー遺伝子変異)が生じてがん細胞が増殖すると、細胞内にすでに生じていたがんとは無関係の遺伝子変異も一緒に増えてしまう。  多数の遺伝子変異のなかからドライバー遺伝子を見つけるには、数多くの人のがん細胞(検体)を集めて比較し、共通の遺伝子変異を見つけ出さなければならない。肺がんや大腸がんなど患者数の多いがんは検体が集まりやすいが、希少がんは難しい。さらに精度の高い遺伝子解析を行うためには、検体を冷凍保存することが必須になる。  がん研究会有明病院では、今回のプロジェクトとは関係なく、手術中や術後にがんの検体の一部を超低温冷凍庫で多数冷凍保存してきた。希少がんのがん肉腫の検体も集積され、さらに、2つの大学病院の協力も得て、今回のプロジェクトの大規模な検体数の確保につながった。



■世界最大109検体の解析を実施
「子宮・卵巣がん肉腫の遺伝子解析研究は、過去の米国での57検体の解析が最多でした。私たちは世界最大の109検体の解析を行った結果、既にドライバー遺伝子変異ではないかといわれていた遺伝子変異の確認や、治療につながる新たな分子型の分類もできました」(森氏)  子宮体がんでは、米国を中心に「分子型分類」が提唱されている。遺伝子解析の結果に基づき、「POLE」「MSI」「CNH」「CNL」の4つの分子型に分類する方法がほぼ確立された。「POLE」は予後がよく、「MSI」は免疫チェックポイント阻害薬の「ペンブロリズマブ」(商品名・キイトルーダ)で効果が得られやすいなど、分類によって治療法が異なると考えられる。子宮・卵巣がん肉腫について米国実施の57検体の解析研究では、検体の数が少ないがゆえに分子型分類を行えなかった。森氏らの研究は、がん肉腫も、子宮体がんと同様の4つの分子型に分けられることを明らかにし、同時に分子型別に治療法の選択が可能なことも示唆した。 「私たちの遺伝子解析でCNHの一部のタイプには、PARP阻害剤の『オラパリブ(商品名・リムパーザ―)』の適用もあることがわかりました。治療法が乏しいなかで、4分類によって新たに治療が行える可能性があるのです」(森氏) 「オラパリブ」は、国内で'18年に再発卵巣がんに対して承認され、その後、「がん化学療法の歴があるBRCA遺伝子変異が陽性で、且つ、手術不能の再発乳がん」に対しても適応が承認された。BRCA遺伝子は、'13年、米国の女優・アンジェリーナ・ジョリーさんが、BRCA1遺伝子変異によるがん予防のための両乳房切除を行い、注目を集めた。BRCA1やBRCA2は、相同組換修復に関わる遺伝子である。DNAは二重鎖構造をしており、この鎖が切れてしまったときに修復する方法を相同組換修復と呼ぶ。 「BRCAというのは遺伝子が作り出すタンパクのことで、遺伝子変異で異常になると相同組換修復できなくなるのです。CNHの患者さんは、いろいろな遺伝子の変異によって相同組換修復ができなくなります。現時点で『オラパリブ』が適用になるのもごく一部の患者さんです。この状況をさらに変えたい」(森氏)



■がんの生成も遺伝子解析から
 CNHやCNLに対しては、既存の分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤では効果が得られにくい。ドライバー遺伝子変異や分類法のさらなる研究を進めて創薬につなげるのが目標だ。遺伝子解析の進展は、治療薬をより効率よく使用し、予後改善への寄与につながった。  たとえば、大腸がんでは、KRAS遺伝子変異の有無で分子標的薬による治療は異なる。乳がんや肺がんなどでも、遺伝子変異によって治療法が違う。もちろん、希少がんや、膵がんのように難治といわれるがんは、遺伝子解析で特徴的な変異が見つかっても、まだ画期的な薬がないこともある。だが、解析を続けるうちに創薬につながるヒントを得ることができれば、一気に治療法の開発が加速する可能性も秘める。 「私たちは、がん肉腫の研究とは別に、家族性乳がんの遺伝子解析の研究も行っています。家族性乳がんでは、BRCA遺伝子変異が有名ですが、それ以外の遺伝子変異に関してはまだわかっていないことが多い。今まで見つけた遺伝子変異には人種的な違いもあります。日本人の遺伝子解析を進めることで、その違いを知ることも重要です」(森氏)  子宮・卵巣がん肉腫の研究でも、日本人の遺伝子解析結果と、米国人のそれとは違いがあったという。米国人には変異があっても日本人のがん肉腫にはない。逆もしかり。つまり、米国の遺伝子解析結果に基づく治療法は、必ずしも日本人に合うとは限らないのだ。また、遺伝子解析でがんの成り立ちの研究を進めると、新たな薬のターゲットも見えてくる可能性がある。 「子宮・卵巣がん肉腫の患者さんが4型分類の検査の一部でも受けられるように、積極的に婦人科の先生方に働きかけたい」(森氏)  希少がんや難治性のがんでも弱点はあるはずだ。それを遺伝子解析で解明することが近い将来できるかもしれない。そのために森氏は新たな研究に意欲を燃やしている。

(2019年12月号掲載)
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