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| −超特権階級の傲りと甘え−
国家公務員の給与＆退職金は高すぎる |
| 「小泉首相は「痛みを分かち合おう」というがまずは公務員から痛みを示せ！」 |
■１億円に手が届く退職金も…
農水省官僚の頂点に立つ事務次官のポストから、事実上「引責辞任」させられた熊澤英昭だが、今年１月の退官時には８千874万円という高額の退職金を手にして、霞が関から立ち去っていた。全国を震撼させたＢＳＥ（狂牛病）問題で、国民から多くの非難の声を浴びながらも農水大臣の椅子に居座り続けた武部勤と同様、彼もまた行政トップの責任を最後まで取らなかった。
いっぽう、ＢＳＥ事件にも負けず劣らず、外務省は機密費詐取事件や裏金プール金問題で、国民的関心を一身に集めた。まさに前代未聞の不祥事だが、トップにあった歴代事務次官たちは、驚くような退職金を貰っていた。省内で不祥事が繰り返されていた当時の最高責任者、つまり川島裕、柳井俊二、林貞行の歴代事務次官の退職金が、それぞれ９千100万円、８千900万円、９千500万円という超高額なものだった。彼らも何一つ責任を問われることなく、のうのうと外務省を�猴β爿瓩靴拭�
普通の民間会社であれば、間違いなく組織の最高責任者として「反社会的行為」と断罪され、厳しく責任追及されていたはずである。しかし、彼らは国家公務員法という特権的な法律に身を守られて、何食わぬ顔をして１億円にも及ぶ大金を貰い、そして老後の悠々自適な生活を保障されているのだ。
国家公務員が退職する場合、とりわけ「指定職」と呼ばれる局長や次官といった高級官僚たちの退職金には、驚かされる。７千万円台から９千万円台という高額が支給されているのだ。不況のどん底に喘ぐ一般国民の感覚からすれば、とんでもない金額である。しかも、困窮する国民の納めた血税から注ぎ込まれていることを考えれば、小泉首相がいかに「痛みを分かち合おう」といっても話は通じない。
国家公務員の退職金について実態調査した民主党の長妻昭衆院議員が怒る。
「まず、次官や局長級以上のものの退職金のリストを見て驚いたのは、次官級で８千万〜９千万円、局長級では７千万〜８千万円という高額だったことだ。それもそういう人はゴロゴロしている。彼らは、定年を前に大半が天下りしているが、その場合に早期退職者の『特例割増制度』というものがある。それを当てはめると、退職金だけで７千万〜８千万円あるうえ、『特例割増』として１千万円が加算される。つまり、合計１億円近いべらぼうなカネが支給されているのだ。さらに天下った先からは、５千万円近くの報酬を得る」
■人事院初のマイナス勧告の裏
退職金だけでなく、国家公務員の給与については、民間企業と比較した場合に「世間相場」とは、大きくかけ離れているのが実態なのだ。
今年８月、民間給与のベースアップに相当する「人事院勧告」で、初めて給与を引き下げる勧告を行った。これは人事院が調査した民間給与と比べ、今年４月の国家公務員の平均給与のほうが上回っていたからだ。そのため、民間水準まで下方修正する必要性があるとして、是正を行った。人事院の勧告制度始まって以来の�爛泪ぅ淵拘�告�瓩範誕蠅砲發覆辰拭�
同院が実施した調査とは企業規模100人以上で、かつ50人以上の事業所を持つ７千886社を抽出したもの。平均月額給与を算出した結果、今年は37万５千96円だった。これに対し、国家公務員の平均給与は38万２千866円（40・９歳）で、若干ながら上回っていたため、２・０３�涌�き下げる勧告を行った。
人事院は’60年の勧告制度実施以来、一貫して賃上げを奨励してきた。その背景には、国家公務員の給与は常に「民間企業を下回っている」という調査結果があったからだ。それを「民間給与並み」にする目標から40年余りにわたってプラス勧告を出し続けてきた。
しかし、この人事院調査に対しては「果たして、これが民間企業の実態給与を表すものなのか」という疑問の声が常に上がっていた。同じ行政官庁の厚生労働省が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」（抽出対象４万２千事業所）では、民間企業の平均給与は30万５千800円（39・９歳）という調査結果がある。人事院調査と比較した場合に、民間企業が約７万円も低い数値となっている。また、東京都が実施している「中小企業の賃金・退職金事情」（３千500社抽出）でも、平均賃金は36万６千862円（40歳）と、こちらも１万５千円以上民間が低い金額だ。人事院の「民間給与並み」というのはいかにも怪しい。
『巨大省庁天下り腐敗白書』の著者・堤和馬氏が指摘する。
「地方でも埼玉県の川口市では、職員給与の『３�優�ット』まで打ち出した役所もあるが、実体経済はリストラの嵐で現実はもっと酷い。それよりも何よりも、公務員は国家公務員法という法律の規定に守られ、決してクビになることがない�狷淡↓瓩鮖�っている。
身分保障の前提からして、民間企業とはまったくスタートラインが違うことを忘れてはならない」
さらにキャリア官僚の高給の実態についても、堤氏はこう批判する。
「とくに『指定職』と呼ばれる局長級以上の高級官僚の給与は常識を超える高額だ。彼らの給与の目安となっているのは『500人以上の企業の役員報酬並み』ということだが、その『500人以上の企業』とは、具体的にどんな会社なのか。それがまったくハッキリしていない。『指定職』制度は’60年代前半から始まったものだが、もともとこれも国民的なコンセンサスを得ないままスタートしたものだった。かりに高級官僚の給与が『民間企業の役員並み』としても、それは役員全体の平均報酬と考えるべきだ。現在、民間企業の役員年収は１千800万円程度である。これに対して局長や次官が貰っている年間給与は２千万〜２千500万円だから、当然高すぎる」
人事院が目標とする「民間給与」が、まったく根拠に乏しいことがわかる。
ではいったい、国家公務員と民間企業の給与は、具体的にどの位の格差となっているのか――。その一つの指標を示す興味深い調査結果がある。民間企業の給与や役員報酬の実態調査を行っている政経研究所がはじき出した『２００２年度国家公務員のモデル給与と民間企業のモデル給与比較』がそれだ。ここで指す公務員のモデル給与とは、人事院給与研究会が編纂している『国家公務員・給与実務てびき』をもとにして算出した平均的給与体系で、より民間企業の給与体系に近い数字となっている。
■第二の給与・交際費にもメスを
この算出結果を見ると、国家公務員�擬錙淵�ャリア）では、大卒のモデル初任給は20万２千608円となり、民間企業のそれと比較すると19万９千700円となる。すでに初任給から格差が発生している。さらに30歳（勤続８年、扶養家族２人のモデル給与）では、国家公務員が31万２千592円に対して、民間企業は28万５千300円。２万円弱の開きが表れ、40歳（勤続18年、扶養３人）では公務員52万６千937円に対し、民間は41万７千300円と10万円強の格差にもなる。そして50歳（同28年、前同２人）では、官が75万６千700円、民は54万円と20万円もの�犂洩嘘丙広瓩�生まれるのだ。
同研究所の所員が解説する。
「なかでも『官民格差』が最も顕著となってくるのは、50歳を超えてからの賃金上昇カーブだ。民間企業であれば、この年齢に達すると上昇カーブは大きく鈍化していくのに対し、公務員の場合には依然として上昇し続ける。これがそれ以後の大きな給与の『格差』となって表れる。公務員の場合には、夏と冬のボーナスの他に『期末調整』も支給されているが、これがいっこうに減っていない。これも大きな違いだ」
現実は、予想を遙かに超える�犂洩嘘丙広瓩�存在しているのだ。
前出の長妻議員は、改革案を語る。
「第一には少なくとも、民間企業より『平均以下』にすることだ。それは公務員法の身分保障からして、民間企業とは前提から違うからだ。第二には、必要性のない分野の仕事をなくし、人件費を削ることである。いまはＮＰＯの活動など、役所に代わる仕事をしている人たちはいっぱい出てきている。必要のない仕事をしている役所はある。
三番目には『第二の給与』といわれるキャリア官僚の『交際費』を即刻なくすことだ。そして、行く行くは、欧米の政権交代で実施されている行政幹部の大胆な民間登用人事など、大臣の人事権行使が必要となる」
人事院でも「公務員制度改革に関する報告の骨子」を表明し、能力や実績を重視した給与制度の確立をうたっている。しかし、「所詮、絵に描いた餅」と冷ややかな評価である。小泉首相の「構造改革なくして、景気回復なし」のフレーズと同様、官民給与もまた、民間だけが「痛み」を強いられている。
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| （2002年12月号掲載） |
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